資源の循環を推進 ふくのわプロジェクト
SDGs経営を推進する富士紡グループは衣類リユース活動「ふくのわプロジェクト」を通じて資源リサイクルなど社会的課題の解決に貢献する取り組みを行っています。その担当者が「ふくのわプロジェクト」の成り立ちや今の取り組みについて語りました。
ふくのわプロジェクト概要
企業や個人の皆さまから寄付いただいた、まだ十分に着られる、使える衣類などをリユースし、国内外の専門業者の買い取りや「ふくのわマルシェ」で販売して、その収益金を5つのパラスポーツ競技団体に寄付する活動です。本プロジェクトは産経新聞社が主催・運営し、平成28・29年度東京都環境局「『持続可能な資源利用』に向けたモデル事業」に採択されました。富士紡ホールディングスはこの活動の主旨に賛同し、オフィシャルパートナーとして提携しています。
――ふくのわプロジェクトとは、どのようなプロジェクトですか?
皆さまから衣服を寄付していただき、それを売却した収益金でパラスポーツ(障がい者スポーツ)を応援していこうというプロジェクトです。具体的には、パラスポーツ日本代表選手団のユニフォーム制作費やふくのわ活動に取り組んでいる学校などへパラアスリートを派遣する講師料などに役立てられています。
――ふくのわプロジェクトを開始した経緯を教えてください。
フジボウでは、ふくのわプロジェクトを開始する前から、東京パラリンピックで金メダルを獲得した国枝慎吾選手で有名な障がい者テニスなど、パラスポーツ(障がい者スポーツ)のサポートをしたことがありました。パラスポーツのサポーターとして会場を訪れたときに、いろいろと気になった点がありました。例えば、パラスポーツの大会には、身体障がい者の方が大勢観客として訪れています。しかし会場がバリアフリーになっておらず、観戦するのが大変です。パラスポーツは、お金がかかります。もっとフジボウで何かできないだろうかと考えていた時に、新聞社様からふくのわプロジェクトの話を聞きました。ふくのわプロジェクトは、もともと新聞社様の社内回収から始まったプロジェクトです。これはフジボウがやろうと思っていたことと合っているなと賛同したというわけです。
その後はSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)を推進していきながらも、基本は「障がい者スポーツを応援する」という趣旨で続けています。
――現在はどういった団体を支援しているのでしょうか?
一般社団法人日本パラバレーボール協会、一般社団法人日本パラ水泳連盟、NPO法人日本パラ・パワーリフティング連盟、一般社団法人日本障害者カヌー協会、一般社団法人日本知的障害者水泳連盟の5団体です。
――衣服はどのように集めるのでしょうか?
都内の11箇所に設置している(2021年9月時点)「ふくのわBOX」に持ち込んでもらったり、提携先の倉庫に持ち込んでもらったりして集めています。しかしコロナ禍でなかなか持ってきていただくのが難しくなりました。
そこで、2020年7月から、宅配キット「おうちでふくのわ」を始めました。これは大きな袋を買っていただき、そこに衣服を入れて送ってもらうものです。袋のデザインは、産経新聞厚生文化事業団が運営する、障がい者施設の利用者の方に描いてもらいました。このように、どんどん活動の幅が広がりつつあります。富士紡ホールディングスは定期的に東京本社でふくのわプロジェクトへ寄付する衣類の社内回収を行っています。
ーー集めた衣服はどのようにリユース・リサイクルされますか?
寄付で集まった衣類はまずは国内の倉庫に集められ、その場で、日本国内で行う、リユースのチャリティ販売イベント「ふくのわマルシェ」で出品・販売する衣服を選定します。残りの衣服は、マレーシアの古着工場で仕分けされたあと、世界各地の気候に合わせてインド、パキスタン、カンボジアなど世界15カ国以上に届けられ、各地の衣料品マーケットで再び衣類として販売されています。
――寄付していただいたけれど、着ることができなかった衣服はどのようにされていますか?
どうしても商品にならなかった古着はウエス(機械器具類の清掃に用いられる布)など、形を変えてリサイクルしています。実は、昔から回収した衣服をウエスにするというリサイクルの取り組みはありましたが、回収した衣服を再度販売するリユースという取り組みは進んでいませんでした。そこで当社はリユースを進めることでパラスポースを応援できるのではないかと考えて参画したのが、この「ふくのわプロジェクト」なのです。
――プロジェクトの運営体制を教えてください。
フジボウがオフィシャルパートナーになっています。後援がフジサンケイグループ様とJAFIC様(一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会)、協力が世田谷区、豊島区など11団体に協力していただいています。2016年に開始し、今年でプロジェクトは5年経過いたしました。これまで2021年9月末時点で、寄付していただいた衣類の総量は約50万kgになります。(2021年9月末時点)
――プロジェクトが5年経過して、世の中に変化はありましたか?
回収した衣料をチャリティー販売するイベント「ふくのわマルシェ」を開催していると、プロジェクト開始当初よりもご参加いただける一般の方が増えてきていると感じます。人々の暮らしの中にリユースの洋服を取り入れようとする意識が着実に根付きつつあります。フジボウからはアンダーウエアの「B.V.D.」などを提供しています。
――人々のリユースに対する意識が広がりつつあるのが感じられますね。寄付金額を増やしていくのが、一つのゴールなのでしょうか?
もちろん、寄付金額が増えるのはサポートするお金が増えることなので、そこも目指しています。しかし、そればかりでなく、世の中全体、日本全体の意識を高めるという気持ちが今は強くなっています。その一環として、今は全国の小学校や中学校でも、衣類や作品を寄付していただいたり、啓発イベントを実施したりしています。子どものうちから意識してもらうことが大事だと思っています。
――啓蒙活動は大事ですよね。今後は、どのように活動の幅を広げ、発展させていく予定でしょうか?
直近では、茨城県の霞ヶ浦で開催されたパラカヌー協会の1日体験イベントに、ふくのわプロジェクトとして協賛しました。参加者には「B.V.D. パワーアスリート」のスポーツタオルをプレゼントしました。今後もパラスポーツのイベントに、どんどん参画していきたいと考えています。
ふくのわプロジェクトが取り組む5つのSDGs
ふくのわプロジェクトは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念に賛同し、衣類のリユース促進への取り組みを通じて、SDGsが掲げる17目標のうち5つの目標への貢献を目指しています。